6月26日付けの西日本新聞朝刊に,安孫子健輔が寄稿した記事が掲載されています。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/opinion_view/article/178078
2015.07.28更新
6月26日付けの西日本新聞朝刊に,安孫子健輔が寄稿した記事が掲載されています。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/opinion_view/article/178078
投稿者:
2015.05.09更新
提言型ニュースサイト「BLOGOS」に,子ども虐待を扱った気になる記事を見つけたので,取り上げてみます。
http://blogos.com/article/111559/
記事の主題は子ども虐待を引き起こす「大人のオトコ」について,哲学好きな筆者がその原因を考察するというもの。筆者の言い分が哲学的に正しいのかどうかは何とも言えませんが,私が気になったのは,筆者が議論の出発点としていた次の記述です。
[ quote ]
児童虐待事件の加害者の75%は「男親」らしい。これは実父(40%)と継父・愛人(35%)に内訳される。
児童虐待,過去最多の476件 加害者の約4割が「実父」(アメーバニュース, March 8, 2013)
実母は20%程度で,加害者別にみると少数派だ。が,虐待死に至らせた親のトップは母親になる。
児童虐待,加害者の64%実の親 12年摘発過去最多(日本経済新聞, March 7, 2013)
全体的には虐待は「大人のオトコ」の犯罪ではあるが,少数だが殺人にまで至る事件(21件/28件)は大人のオンナが引き起こしている。
だから児童虐待を考えるとき,まずは1.「なぜ大人のオトコが引き起こすのか」という点を考える必要がある。その次に,2.「凶悪ケースではなぜ大人のオンナが多いのか」ということになる。
2.は,オンナの場合はDVの加害者として自らのストレスがパートナーに向かうことはないので(むしろDVの被害者),日常のストレスがパートナーではなく,身体的に自分より弱い子どもに向かう,という点で説明される場合もあるようだ。
凶悪事件はオンナが主原因だとしても(僕はこの裏には,「オンナへの操作的関わり」等で,何らかの意味でオトコが絡んでいると推察するが),数的には大人のオトコが圧倒的に多いことから,児童虐待とはまずは大人のオトコが加害者である,と僕は位置づけている。
[ unquote ]
ここで引用した記述は,実はまったくの誤りです。
このブログで引用されているデータはいずれも警察庁の統計に基づいていますが,これは警察が「事件」として認知した件数,言い換えれば「警察沙汰」になった子ども虐待の件数で,現実に起こっている子ども虐待の件数とイコールではありません。より広く子ども虐待のケースを扱っている児童相談所の統計によると,全国の児童相談所が2012年度に対応した子ども虐待相談の件数は66,701件に達していて,警察庁が同じ年に「事件」として認知した472件というのは,氷山の一角にも満たないことが分かります。つまり,このブログが依拠しているデータは,警察沙汰になるような深刻なケースだけを扱っていて,子ども虐待の実情を正確に表しているわけではありません(ちなみに,アメーバニュースが扱っているデータを前提としても,「男親」の割合は75%にはなりません。)。
では,実際は誰が子ども虐待を引き起こしているのかというと,先ほど取り上げた児童相談所の統計(2012年度)によると,虐待者の内訳は実母が57.31%と圧倒的に多く,他方,実父は28.95%(実父以外の父を含めても35.16%)にとどまります。もちろん,児童相談所がすべての子ども虐待を把握しているわけではありませんが,警察庁の統計よりも実態を正確に反映していることは疑いありません。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001115458
「凶悪事件はオンナが主原因」という表現も,確かに,過去10年ほどの間に発生した子ども虐待による死亡事例546件のうち,実母が虐待者となっているケースは55.68%(実母が実父などとともに加害者となっているケースは67.40%)と多いのですが,警察庁の統計が表しているように,警察沙汰になるケースを全体として見ると実父が38.8%を占めていて,何をもって「凶悪」とするのかによって,評価は違ってきます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000057947.html
子ども虐待は,犯罪や非行と同じく,誤解や偏見の多い社会問題。正しい対策をとるには,正しいエビデンスが必要ですね。
あびこ
投稿者:
2015.04.22更新
投稿者:
2015.04.15更新
11歳の男子児童の蹴ったサッカーボールが小学校の校庭から転がり出て,これを避けようとした自動二輪車の運転者が転倒して負傷,入院先で誤嚥性肺炎により死亡した事案について,最高裁は,平成27年4月9日,この児童の父母に対する損害賠償請求を退けました。
責任能力のない未成年者の親権者には①「直接的な監視下にない子の行動」について,人身に危険が及ばないように注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があるが,この指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないとし,②「通常は人身に危害が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合」は,③「当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない」限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきでないと判示しています。
認知症高齢者が列車にはねられた事件の上告審が最高裁に係属していますが,最高裁は,この事件について,どのような判断をするのでしょうか。
松村
投稿者:
2015.03.31更新
先日札幌地裁で、野球観戦に来ていた方にファウルボールがあたって
失明してしまったという事故があり、日本ハム球団側に賠償を命じる判決が下りました。
以下「どうしんウェブ引用」
「札幌ドーム(札幌市豊平区)でプロ野球の試合を内野席で観戦中にファウルボールの直撃を受けて右目を失明した札幌市の30代女性が、北海道日本ハムファイターズと管理会社の札幌ドーム、ドームを所有する札幌市に約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、札幌地裁であった。長谷川恭弘裁判長は「ドームの設備は安全性を欠いていた」として、球団などに約4200万円の支払いを命じた。
原告代理人の弁護士によると、同種の訴訟で球団側に損害賠償を命じる判決は全国初とみられる。球団側は「一球団のみならず野球界全体に及ぼす影響も十分に考えられる」として控訴する方針。
判決理由で、長谷川裁判長は「ファウルボールがごくわずかな時間で観客席に飛来することを考えると、ドームの安全設備は観客の危険を防止するに足りなかった」と結論付けた。
判決によると、女性は10年8月、日ハムの試合を一塁側内野席で家族と観戦中、ファウルボールが顔に当たり、眼球破裂で右目を失明した。」(引用終わり)
福岡もヤフオクドームでプロ野球の試合が開催されており
コカコーラシートなど防御ネットが全くなく、
間近でプロ野球選手のプレーを体感できることをうりにしたシートがあります。
球団側が控訴をする理由で述べているように
これは球界全体に影響を及ぼすことになりそうです。
野球観戦する場合に、「ファウルボールによる怪我については一切責任を負わない」と
誓約させるのも消費者契約法からみて難しいでしょうし、かといって、全ての賠償義務を負担する
というのは、球団側にとって酷でしょうね。
では、札幌地裁がいう安全性はどこまで求められるのか?
メジャーリーグの球場はほとんどネットがありません。
フィールドと観客席もかなり近いと言われています。
ボールパークとも呼ばれ、観客は野球を一緒に楽しみに来ています。
日本では、文化の違いといえば簡単ですが
球場にいくのは、プロ野球を見に行く?応援に行く?プロの凄さを体感する?
接待でたまたま来て、ビールを飲む?デート?_
フィールドと防御ネットで囲めばこのような事故は起きないのは
わかりますが、これではプロ野球を生で観戦するという醍醐味が全くそがれてしまいます。
プロ野球を見に行くということがどういうことなのか。球団に求められる安全配慮義務とは
どういうものなのか。
高裁の判断が注目されます。
ヤスハラ
投稿者:
2015.03.21更新
【Q】
「父が亡くなったので,実家の土地と建物の名義を変更しようと思ったら,まだ祖父の名義になっていることが分かりました。相続人を調べてみたのですが,会ったこともない人がいるし,連絡が取れない人もいるし,困っています。私の名義にするにはどうすればいいでしょうか。」
【A】
相続が起こったときは,市区町村役場で戸籍を取り寄せて相続人を確認し,その相続人と連絡を取って,遺産分割の話合いをする必要があります。相続人の中に会ったことがない人がいる場合でも,その人を除いて遺産分割の話合いをすることはできません(そのような遺産分割は無効なので,相続人全員の署名押印のない遺産分割協議書を法務局に持って行っても,登記名義の変更は受け付けてもらえません)。必ず相続人全員と連絡を取って,遺産分割協議書に署名押印をもらっておく必要があります。住所が分からない場合は,戸籍と一緒に取得できる「附票」で確認することができます。
ところが,戸籍の附票で住所を調べて手紙を出してみても,実際はそこに相続人が住んでおらず,連絡が取れない,という場合があります。連絡が取れなくても,やはりその相続人を外して遺産分割協議を進めることはできません。
こんなときに使うのが「不在者の財産管理人制度」です。住所や居所を去って,戻ってくる見込みのない人(不在者)について,家庭裁判所が,その人の代わりに財産を管理する人を選任する制度です。
不在者の財産管理人を選任するときは,家庭裁判所に書類を揃えて申し立てることが必要です。通常は財産管理人の候補者も事前に見つけて,申立書に書いておきます。
家庭裁判所が財産管理人を選任してくれたときは,その財産管理人を含めて遺産分割協議を行うことになりますが,財産管理人は不在者の財産を「管理」する権限しか持っていませんので,財産を「処分」を伴う遺産分割協議は,当然には行うことができません。財産管理人が遺産分割協議を行うには,あらかじめ遺産分割の内容を整理して,家庭裁判所から「権限外行為の許可」をもらう必要があります。
権限外行為の許可が得られれば,財産管理人を含めて遺産分割協議書を作成することになります。
あびこ
投稿者:
2015.01.30更新
昨年マンションの建替えの円滑化等に関する法律
(マンション建替円滑化法)が改正されました。
この改正の最大の目玉は
「マンション一棟をまるごと売却する制度」の導入です。
耐震性が不足するのマンションは全国で約106万戸程度あると
いわれており(国土交通省調べ)、この制度の導入によって
マンションの耐震性不足の解消を促進しようとしました。
対象となるであろうといわれているのは旧耐震基準(昭和56年6月以前)
で建築されたマンションです。
マンションの管理組合(理事会)としては、お住まいのマンションが
旧耐震基準で建築されている場合には、一部有志で勉強会などを始めて
この制度を使って売却すべきかどうかを検討することが、今後課題と
なっていくと思われます。
当事務所でも相談可能ですし、同じビルには福岡マンション管理組合連合会が
入っておりますので、そちらに管理組合運営ということで相談されても良いかと
思います。
また、弁護士会でも公益社団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターから
委託を受けて、相談体制をとっております。
こちらを利用される場合は、住まいるダイヤル(0570-016-100)にお電話下さい。
投稿者:
2015.01.05更新
投稿者:
2014.12.10更新
大阪市教育委員会が,子どもに体罰を加えた教職員に対する処分の基準を改め,公表しました。
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「体罰・暴力行為を許さない学校づくりの徹底について」及び「体罰・暴力行為に対する処分等の基準」策定について
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kyoiku/0000291684.html
--------------------
改定のポイントについて,大阪市教育委員会は次のように説明しています。
[ quote ]
大阪市教育委員会は,平成25年9月に策定した『体罰・暴力行為の防止及び発生時の対応に関する指針』において,非違行為を行った児童生徒に対する懲戒目的の「体罰」と,児童生徒に非違行為がなく懲戒目的とは言えない「暴力行為」を明確に区別しました。いずれも法的に禁止された許されない行為ですが,懲戒処分及び行政措置(以下,「処分等」という。)の量定については,「児童生徒の非違行為に対する行為」と「非違行為のない児童生徒に対する行為」を同一基準で判断することは適当でないと考えられ,今後は「非違行為のない児童生徒に対する行為」に対しては一層厳正に対処していくこととし,従来の基準(内規)を改定して,新たに下表のとおり「体罰・暴力行為に対する処分等の基準」を設定します。本基準は,公表し,広く周知していくことで,教職員の更なる自覚を促し,暴力的指導に頼らない,人格の尊厳に根ざした指導を徹底するとともに,学校教育への信頼に繋げたいと考えています。なお,本基準は,大阪市職員基本条例第28条及び別表の定める懲戒の基準を遵守し,その公正かつ厳格な運用を図るものです。
[ unquote ]
不利益処分について一定の基準を示そうという姿勢は評価できますし,判断に際して子どもの非違行為を考慮すること自体が許されないとも思いません。引っかかるのは,なぜ非違行為の存否が処分の軽重を決定的に区別することになるのか,という点です。
「体罰教師」と言えども,誰それ構わず手を挙げるわけではありません。「おりこうさん」は体罰がなくても言うことを聞いてくれるので,多くの場合,ターゲットになるのは「やんちゃ」な子どもたちです。そうした子どもたちの言動を一面的に切り取って「非違行為」だと主張しようと思えば,ネタはいくらでも出てくるはずです。
しかも非違行為の存否は処分の軽重を大きく左右するわけですから,処分を争う教職員は,子どもに非違行為があったことを徹底的に争わざるを得ません。場合によっては,「この子はこんなに悪いことをしたんだ。」,「こんなこと言われたら,ゲンコツのひとつやふたつあっても仕方ないだろう。」,「この子は日ごろから素行が悪く,手を焼いていたんだ。」といった主張が法廷に持ち込まれる可能性もあります。
しかし,こうした教職員の主張は,教育のあり方として適切なのでしょうか。「非違行為」は,その子どもが家族や友だち,あるいは当の教職員との関係で抱える悩みを表しているかもしれません。子どもの心理的な課題が,その背後に見え隠れするかもしれません。そう考えると,教職員には,「非違行為」があったときこそ,力に頼らず,語り諭すことが求められているのではないでしょうか。「子どもに非があれば大目にみるよ。」と言い切る今回の新基準は,私には,教育のあり方を根本から否定しているように思えてなりません。
大阪市教育委員会は,引用した文章にも見られるように,児童生徒の非違行為に神経を尖らせています。今年の5月には,いわゆる「ゼロ・トレランス」を実践に移す検討を始めたという報道も目にしました。こうした流れの中で今回の新基準を見ると,そこには「非違行為のある児童生徒は教育現場から排除する」という強烈なメッセージが込められていることが読み取れます。
しかし,「非違行為」のある子どもは,教室から追い出せば済むのでしょうか。「非違行為」に至った原因を探り,子ども自身の気づきを促すのが教育の役割ではないでしょうか。教室は,いつ間に「おりこうさん」のためのものになったのでしょうか。
排除される子どもたちが心配です。どうやって歯止めをかけられるか,ない頭をひねってみます。
あびこ
投稿者:
2014.11.28更新
福岡市の児童相談所が入居する「福岡市こども総合相談センター(えがお館)」は,福岡ドームの隣にあります・・・。それはそれで本当のことですが,ここで言いたいのは,地理的なアクセスのことではありません。
児童相談所がターゲットにしているのは,虐待を受けている子どもたちや,子育ての悩みを抱えた親御さんたち。こうした人たちの話を聞き,課題を見つけ,その課題を解決できるように様々な社会資源を駆使して支えていくのが,児童相談所の仕事です。
ところが,虐待を受けている子どもたちも,子育ての悩みを抱えた親御さんたちも,自分から相談に出向くのはほんの一握り。虐待を受けている子どもの多くは,自分が「被害者」だとは認識していませんし,子育てに悩む親御さんも,「自分で頑張らなきゃ。」とか,「子育てに失敗した親だと思われたくない。」とかいった心理が働いて,SOSを発信しにくい状況にあるからです。
虐待で子どもが亡くなったり重篤な後遺症を負ったりする事件を見ても,必ずと言っていいほど,背景に「孤立」の問題が横たわっています。
こうした問題を解決するために,児童相談所では,相談窓口を広げたり,SOSをキャッチしやすい医療機関や保健所,学校からの情報収集に努めたりと,さまざまな対策を進めています。
しかし,勇気を振り絞って「児童相談所に相談しよう!」と思ったとき,いったいどこに電話をかければいいのか,知っている人は少ないのではないでしょうか。そうした場面で,まず最初に思いつくのは,「インターネットで調べてみよう。」ということ。スマートフォンが普及して,ほとんどの人がインターネットを使うことができるようになっている現在,このツールを使わない手はありません。
とはいえ,児童相談所は「お役所」です。都道府県や政令指定都市は,たいてい児童相談所を紹介するページを持っていますが,どれもお堅い造りで,お世辞にも相談しやすい雰囲気とは言えません。
つい先日,ここに目をつけた画期的なプロジェクトが始まりました。九州大学の田北雅裕さんが中心となって,福岡市児童相談所のホームページをデザインしようというプロジェクトです。
しかも,ただ業者さんに製作を依頼するわけではなく,クラウドファンディングを使って資金を集め,それを福岡市に寄付してしまおうという野心的な試み。資金的な問題をクリアすると同時に,児童相談所の存在や役割を知ってもらうこともできます。
寄付の受付けは来年1月15日まで。登録も簡単で,クレジットカードで入金できます。一定額以上の寄付をした人には素敵なノベルティが送られるそうなので,ぜひ立ち寄ってみてください。
https://motion-gallery.net/projects/localdesign
あびこ
投稿者: