弁護士コラム

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2014.12.10更新

大阪市教育委員会が,子どもに体罰を加えた教職員に対する処分の基準を改め,公表しました。

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「体罰・暴力行為を許さない学校づくりの徹底について」及び「体罰・暴力行為に対する処分等の基準」策定について

http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kyoiku/0000291684.html

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改定のポイントについて,大阪市教育委員会は次のように説明しています。

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大阪市教育委員会は,平成25年9月に策定した『体罰・暴力行為の防止及び発生時の対応に関する指針』において,非違行為を行った児童生徒に対する懲戒目的の「体罰」と,児童生徒に非違行為がなく懲戒目的とは言えない「暴力行為」を明確に区別しました。いずれも法的に禁止された許されない行為ですが,懲戒処分及び行政措置(以下,「処分等」という。)の量定については,「児童生徒の非違行為に対する行為」と「非違行為のない児童生徒に対する行為」を同一基準で判断することは適当でないと考えられ,今後は「非違行為のない児童生徒に対する行為」に対しては一層厳正に対処していくこととし,従来の基準(内規)を改定して,新たに下表のとおり「体罰・暴力行為に対する処分等の基準」を設定します。本基準は,公表し,広く周知していくことで,教職員の更なる自覚を促し,暴力的指導に頼らない,人格の尊厳に根ざした指導を徹底するとともに,学校教育への信頼に繋げたいと考えています。なお,本基準は,大阪市職員基本条例第28条及び別表の定める懲戒の基準を遵守し,その公正かつ厳格な運用を図るものです。

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不利益処分について一定の基準を示そうという姿勢は評価できますし,判断に際して子どもの非違行為を考慮すること自体が許されないとも思いません。引っかかるのは,なぜ非違行為の存否が処分の軽重を決定的に区別することになるのか,という点です。

「体罰教師」と言えども,誰それ構わず手を挙げるわけではありません。「おりこうさん」は体罰がなくても言うことを聞いてくれるので,多くの場合,ターゲットになるのは「やんちゃ」な子どもたちです。そうした子どもたちの言動を一面的に切り取って「非違行為」だと主張しようと思えば,ネタはいくらでも出てくるはずです。

しかも非違行為の存否は処分の軽重を大きく左右するわけですから,処分を争う教職員は,子どもに非違行為があったことを徹底的に争わざるを得ません。場合によっては,「この子はこんなに悪いことをしたんだ。」,「こんなこと言われたら,ゲンコツのひとつやふたつあっても仕方ないだろう。」,「この子は日ごろから素行が悪く,手を焼いていたんだ。」といった主張が法廷に持ち込まれる可能性もあります。

しかし,こうした教職員の主張は,教育のあり方として適切なのでしょうか。「非違行為」は,その子どもが家族や友だち,あるいは当の教職員との関係で抱える悩みを表しているかもしれません。子どもの心理的な課題が,その背後に見え隠れするかもしれません。そう考えると,教職員には,「非違行為」があったときこそ,力に頼らず,語り諭すことが求められているのではないでしょうか。「子どもに非があれば大目にみるよ。」と言い切る今回の新基準は,私には,教育のあり方を根本から否定しているように思えてなりません。

大阪市教育委員会は,引用した文章にも見られるように,児童生徒の非違行為に神経を尖らせています。今年の5月には,いわゆる「ゼロ・トレランス」を実践に移す検討を始めたという報道も目にしました。こうした流れの中で今回の新基準を見ると,そこには「非違行為のある児童生徒は教育現場から排除する」という強烈なメッセージが込められていることが読み取れます。

しかし,「非違行為」のある子どもは,教室から追い出せば済むのでしょうか。「非違行為」に至った原因を探り,子ども自身の気づきを促すのが教育の役割ではないでしょうか。教室は,いつ間に「おりこうさん」のためのものになったのでしょうか。

排除される子どもたちが心配です。どうやって歯止めをかけられるか,ない頭をひねってみます。

あびこ

投稿者: 昭和通り法律事務所

2014.11.28更新

福岡市の児童相談所が入居する「福岡市こども総合相談センター(えがお館)」は,福岡ドームの隣にあります・・・。それはそれで本当のことですが,ここで言いたいのは,地理的なアクセスのことではありません。

児童相談所がターゲットにしているのは,虐待を受けている子どもたちや,子育ての悩みを抱えた親御さんたち。こうした人たちの話を聞き,課題を見つけ,その課題を解決できるように様々な社会資源を駆使して支えていくのが,児童相談所の仕事です。

ところが,虐待を受けている子どもたちも,子育ての悩みを抱えた親御さんたちも,自分から相談に出向くのはほんの一握り。虐待を受けている子どもの多くは,自分が「被害者」だとは認識していませんし,子育てに悩む親御さんも,「自分で頑張らなきゃ。」とか,「子育てに失敗した親だと思われたくない。」とかいった心理が働いて,SOSを発信しにくい状況にあるからです。

虐待で子どもが亡くなったり重篤な後遺症を負ったりする事件を見ても,必ずと言っていいほど,背景に「孤立」の問題が横たわっています。

こうした問題を解決するために,児童相談所では,相談窓口を広げたり,SOSをキャッチしやすい医療機関や保健所,学校からの情報収集に努めたりと,さまざまな対策を進めています。

しかし,勇気を振り絞って「児童相談所に相談しよう!」と思ったとき,いったいどこに電話をかければいいのか,知っている人は少ないのではないでしょうか。そうした場面で,まず最初に思いつくのは,「インターネットで調べてみよう。」ということ。スマートフォンが普及して,ほとんどの人がインターネットを使うことができるようになっている現在,このツールを使わない手はありません。

とはいえ,児童相談所は「お役所」です。都道府県や政令指定都市は,たいてい児童相談所を紹介するページを持っていますが,どれもお堅い造りで,お世辞にも相談しやすい雰囲気とは言えません。

つい先日,ここに目をつけた画期的なプロジェクトが始まりました。九州大学の田北雅裕さんが中心となって,福岡市児童相談所のホームページをデザインしようというプロジェクトです。

しかも,ただ業者さんに製作を依頼するわけではなく,クラウドファンディングを使って資金を集め,それを福岡市に寄付してしまおうという野心的な試み。資金的な問題をクリアすると同時に,児童相談所の存在や役割を知ってもらうこともできます。

寄付の受付けは来年1月15日まで。登録も簡単で,クレジットカードで入金できます。一定額以上の寄付をした人には素敵なノベルティが送られるそうなので,ぜひ立ち寄ってみてください。

https://motion-gallery.net/projects/localdesign

あびこ

投稿者: 昭和通り法律事務所

2014.09.25更新

掲載から少々経っていますが,気になる記事のご紹介です。

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校区に里親 子ども安心 福岡市がモデル事業
「親が入院」一時預かり 友人,学校 環境変わらず

2014年09月14日(最終更新 2014年09月14日 01時35分)

福岡市は,親の病気や入院などで一時的に親と暮らせなくなった子どもを同じ小学校区の里親が短期間預かる「校区里親」制度の導入に取り組んでいる。従来の仕組みでは,家から離れた土地に預けられ,環境が激変するケースが多いことから,子どもの心の負担を減らし,地域で育てようという全国に先駆けた試み。同市西区をモデル地区に指定し,6月から地元自治会への研修会を開くなど受け皿づくりを進めている。

親と暮らせなくなった子どもは児童相談所(児相)に一時保護され,児相が年齢によって乳児院や児童養護施設,里親に養育を委託する。学校や保育園などを変わらなければならないことが多く,子どもが地域とのつながりも失ってしまうことが問題視されてきた。

保護の理由が親の虐待以外であれば,住み慣れた地域で生活を続けるのが望ましい。福岡市が提唱する校区里親制度は,遠隔地への転居や転校に伴う子どものストレスをなくすのが狙いで,里親は数カ月間子どもを預かる。子育てにかかった費用や里親手当は公費から支給する。養子縁組や長期間の養育は想定していない。今回の福岡市の取り組みについて,厚生労働省は「そういう仕組みが必要との声は上がっていたが,実践している自治体は聞いたことがない」としている。

福岡市では毎年20~50人の子どもの養育が里親に委託されているが,同市に登録している里親(養子縁組希望を除く)は今年4月1日現在で78世帯にとどまり,小学校区別では143校区中56校区とまだ少ない。

モデル地区の西区では,児相と同市子ども家庭支援センター,乳児院などが連携し,自治協議会への説明や区役所職員の研修をこれまでに計10回実施。今後は民生委員や子ども会への研修なども通じて理解と協力を求め,里親希望者を募っていく。

センターを運営するNPO法人「SOS子どもの村JAPAN」(福岡市)の坂本雅子常務理事は「親と暮らせなくなりショックを受けている子どもにとって,地域や友人は宝物。失うものを一つでも減らす仕組みを確立させ,全国に広めていきたい」と話している。

・丁寧な対応 必要

西南学院大の安部計彦教授(児童福祉)の話 児相に寄せられる養護相談の半数は,親やきょうだい児の入院などで子どもの世話ができないというもの。そんな子が地域や友人と離れずに済む仕組みは高く評価できる。ただ,里親としての専門性は高くない。児相職員が丁寧に対応する必要がある。

=2014/09/14付 西日本新聞朝刊=

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http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_toshiken/article/114047

校区里親は,福岡市で里親委託率の急上昇を支えてきた「ファミリーシップふくおか(市民参加型里親普及事業実行委員会)」がひとつの到達目標として当初から目論んでいた取組み。「子育ての社会化」をカタチにする試みとして,関係者の注目を集めています。

安部教授が指摘しているように,経験の乏しい里親を支えられるかどうかが,成功のカギを握っています。委託される子どものほうも,一時保護所でしっかりアセスメントを受けてくるわけではありません。里親に想定外の負担がのしかかるリスクもあります。

それからもうひとつ,地域のニーズを拾って里親に繋ぐ役割を誰が果たすのかという問題もあります。校区里親が対象にしているのは,SOSが出しにくい家庭。か細い声を聞き漏らさない仕組みが不可欠です。

子どもの問題にとどまらず,地域全体を支える仕組みづくりが,求められているように思います。

あびこ

投稿者: 昭和通り法律事務所

2014.09.19更新

先日、保育園の経営者の方々(理事長さんや、事務長)向けに
税理士の先生、社会保険労務士の先生とセミナーを行いました。

私の担当はもちろん法律問題
今回で3度目
これまでは、保育所が訴えられるようなケースを裁判例を題材に
してきました。

今回は、趣向を変えて従業員や保護者の方々が抱える悩みに
保育園としてどうかかわるのかという視点からお話をさせていただき
最後は、法律クイズを20問ほど用意して、わかってるようでわかっていない
法律問題を参加者の方々と一緒に考える形式にしてみました。

このようなセミナーも面白いなあと思い、また企画したいと思っております。

当事務所では、セミナーもご希望があれば承ります。
他士業の先生方とのコラボ企画もOKです。

お気軽にご相談ください。

投稿者: 昭和通り法律事務所

2014.07.16更新

2週間ほど前,国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ東京オフィス(HRW)の土井早苗代表が福岡にいらっしゃるということで,意見交換の機会をいただきました。

HRWは,世界各国の人権状況を監視するNGOで,毎年たくさんの報告書を公表して,人権課題の解決に向けた活動を行っています。そのHRWが,今年5月,「夢がもてない:養護施設や里親の下で暮らす子どもたち」というタイトルの報告書を公表しました。

国際人権NGOが取り扱う人権課題というと,途上国や紛争地域に目が向きがちですが,日本にも深刻な課題がたくさん残っていて,とりわけ子どもの人権については,先進国の中で最も遅れていると言われています。今回の報告書は,子どもに関する人権課題の中でも,社会的養護(親と暮らせない子どもたちを養育する取組み)の分野に着目して,厳しい注文を付けています。

報告書と一緒にリリースされた動画には,次のような説明が添えられています。

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日本では,実親と暮らせなくなった39,047人(2013年時点)の子どもたちが,­乳児院,児童養護施設,情緒障害児短期治療施設,自立援助ホーム,里親制度,ファミリ­ーホームからなる「社会的養護」システムの下で生活しています。そのうち,施設に収容­中の子どもは全体の85%。この比率は,米国の23%や韓国の56%と比べてもとても­高く,子どもにとり家庭環境での養育が重要とする国際基準からもかけ離れています。更­に,養子縁組され,社会的養護の外に出る子どもはわずか303人(2011年)しかい­ません。これらの子どもたちは,生活に必要なスキルを身につける機会もなく,大人とな­っても自立した生活を営むことが難しい状況におかれています。

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http://www.hrw.org/ja/video/2014/05/27

土井さんとは,弁護士としてこの問題にどう関与できるか,という視点で意見を交わしました。込み入った話になるので,詳細は書ききれませんが,福祉の分野にとどまらず,司法の分野でも改善できる余地がたくさんあることを教えていただきました。

福岡で何かできることがないか,考えていきたいと思います。

あびこ

投稿者: 昭和通り法律事務所

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