6月26日の西日本新聞朝刊に掲載していただいた記事。ウェブ版がリンク切れになってしまったので,こちらに本文を掲載させていただきます(筆が入る前の原稿です)。
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たとえばあなたの目の前に,顔を腫らした若い女性が現れたとしよう。聞けば18歳の高校3年生で,小さいころからずっと虐待を受けてきたと言う。さて,あなたはどう動くだろうか。
子どもが虐待を受けていると聞くと,まず思い浮かぶのは児童相談所(児相)だ。しかし児相は彼女を保護できない。児童福祉法が保護の対象を18歳未満の子どもに限っているからだ。
18歳なら家を出て働くこともできるじゃないかと思う人もいるかもしれない。しかしそうなれば,高校卒業は極めて難しくなる。友だちも失うだろう。そんな選択を迫るのはあまりにも酷だ。
仮に彼女が働くことにしたとしても,生活していくのは容易ではない。虐待を受けてきた子どもの多くは,規則正しい生活を身につけていない。人を信頼することも苦手で,職場内でうまくコミュニケーションをとることができない。フルタイムで働き続けられる子どもはわずかで,多くは先行きの見えない非正規雇用を続けることになる。危険な労働や,性産業に取り込まれる子どもも珍しくない。
虐待を受けた子どもたちは,こうして社会から排除される。その社会を作っているのは他でもない,私たちだ。
では,どうすればいいのか。
答えはシンプルだ。この社会が,子どもたちにとって魅力的で,居心地のいい存在になればいい。安全と安心が保障された多様な居場所と,生活を支える豊富な人的・物的資源,そして居場所や資源と子どもたちとをつなぐ仕組みがあれば,たくさんの子どもたちが輝きを取り戻してくれるはずだ。そだちの樹はこうした理念を掲げて,10代後半の子どもたちを保護する子どもシェルター「ここ」を2012年に開設し(現在は休止中),今年4月には,居場所や資源と子どもたちとのつなぎ役を担うため,新たに相談窓口「ここライン」(http://sodachinoki.org/kokoline)を開設した。
自分には荷が重いと感じるかもしれないが,決してそんなことはない。いつも自分を気にかけてくれるバイト先の先輩,すれ違うたびに「元気?」と声をかけてくれる近所のおばちゃん,何を話しても優しくうなずいてくれる中学の友だち,そんな誰にでも可能性のある身近な人が,子どもたちを闇の中から引き上げてくれることもある。近くに気になる子どもはいないだろうか。まずはその子の背景に,目を向けてみてほしい。
すべての子どもたちがきらめく未来へ。さあ,あなたはどう動くだろうか。
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あびこ