気になる審判例があったので,備忘も兼ねてご紹介します。
1 軽度精神発達障害等のある未成年者が,特別支援学校に進学するに当たり,療育手帳の取得等を行わなければならないにもかかわらず,親権者がこれに応じないために,親権停止を求めた本案に関し,緊急性を要するとして申し立てられた審判前の保全処分事件について,保全の必要性を認め,親権者の未成年者に対する親権者としての職務の執行を停止し,その停止期間中の職務代行者を選任した事例(千葉家裁館山支部・H28.3.17審判)
2 特別支援学校への進学手続完了後,本案について,親権の行使が不適切であることにより未成年者の利益を害するとして親権の停止を認めた事例(千葉家裁館山支部・H28.3.31審判)
http://www.hanta.co.jp/books/6695/
判タの解説は,義務教育以外の教育についても,親権者は憲法26条1項,教育基本法4条1項の趣旨に沿って子に教育を受けさせる必要があり,義務があるとの見解を前提に,親権者が高校受験を認めない場合や特別支援学校への通学を認めない場合の親権停止制度の利用が想定されている,と指摘しています。
児童養護施設の施設長は,児童福祉法47条3項に基づいて,「監護,教育及び懲戒に関し,その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる」とされていますが,特別支援学校に入学させるかどうかは,この「必要な措置」には含まれず,親権者に決定権があると考えられています。しかし現場では,日ごろ子どもの様子を見ていない親権者が子どもの障害を受容できず,特別支援学校への進学を拒むケースがしばしば見られると言われます。
ふたつの審判は,こうしたケースについて,義務教育とされない高等部であっても親権停止の審判を得て特別支援学校に入学する可能性を開いたという点で,また入学時期が迫っている場合でも,審判前の保全処分で職務代行者を選任してもらい,時機に遅れず入学する先例を作ったという点で,たいへん意義深いと感じています。
Viva! 千葉児相!
あびこ